車高調を入れてから、
「なんだか乗り心地がゴツゴツする…」
「段差でドンッと突き上げる感じが強い」
そんな違和感を覚えたことはありませんか?
その原因、もしかするとプリロード設定にあるかもしれません。
プリロードと聞くと、
「かけると硬くなる」
「ゼロが正解」
「正直よく分からない…」
といった声をよく耳にします。実際、ネット上にはさまざまな意見があり、何が正しいのか迷ってしまいますよね。
でも安心してください。
プリロードは“感覚任せ”で調整するものではなく、仕組みを理解すれば理屈で整理できるセッティングです。
本来のプリロード調整は、乗り心地を悪化させるためのものではありません。
街乗りでの快適さと、スポーツ走行時の安定感を両立させるために、サスペンションの動き出しやストローク配分を整える重要な役割を持っています。
この記事では、スポーツカー向け車高調を前提に、
- プリロードとは何か、その正体
- プリロードをかけると何がどう変わるのか
- やりすぎないための考え方と調整手順
を、できるだけ専門用語をかみ砕きながら解説していきます。
「とりあえずメーカー推奨だから…」で終わらせず、
自分の車・自分の使い方に合った足回りを作りたい方は、ぜひ最後まで読み進めてみてくださいね 🙂
Ⅰ. プリロードとは何か?
プリロードの定義
まず最初に押さえておきたいのが、プリロード=バネをあらかじめ縮めておくこと、という点です。
車高調に使われているスプリングは、何も力がかかっていない状態では「自由長」と呼ばれる本来の長さを保っています。 プリロード調整とは、このスプリングシートの位置を変えることで、スプリングに初期張力(与圧)を与えた状態を作ることを指します。
ここで重要なのは、プリロードは「車高を下げるための調整」でも「バネを硬くする調整」でもないという点です。
バネレートは変わらない
よくある誤解のひとつが、
「プリロードをかけるとバネが硬くなる」という考え方です。
結論から言うと、直巻きのシングルレートスプリングであれば、プリロードをかけてもバネレート自体は変化しません。
たとえば、5kgf/mmのスプリングは、どれだけプリロードをかけても5kgf/mmのままです。 これは物理的な特性であり、感覚や好みの問題ではありません。
ではなぜ、「硬くなったように感じる」ことがあるのでしょうか。
プリロードで変わるのは“動き出し”
プリロードをかけることで変化するのは、バネの硬さそのものではなく、サスペンションが動き始めるまでに必要な力です。
プリロードがかかっている状態では、スプリングはすでに縮んでいます。 そのため、路面からの入力があっても、ある程度の力が加わるまでサスペンションが動き出しません。
この「動き出しの変化」が、
- ゴツゴツ感が出る
- 落ち着いた動きに感じる
- 挙動が掴みやすくなる
といった体感の違いにつながります。
プリロードの本質はストローク配分
プリロード調整の本質は、1G状態(車が静止して接地している状態)でのダンパー位置をどこに置くか、という点にあります。
プリロードをかけると、その分だけダンパーの初期位置が変わり、
- 伸び側ストロークが減る
- 縮み側ストロークが増える
というストローク配分の変化が起こります。
つまりプリロードとは、
「サスペンションの動く範囲をどう配分するかを決める調整」なのです。
プリロードとは…(本文)
参考:Wikipedia – Coilover(英語)

ここを理解しておくと、 「なぜプリロードをかけすぎると乗り心地が悪くなるのか」 「なぜゼロプリロードが選ばれる場面があるのか」 といった疑問も、自然と整理できるようになります。
Ⅱ. プリロード調整が必要になる場面
プリロードは、やみくもに触るべき調整項目ではありません。 ですが、車高調を装着したスポーツカーでは、プリロードが原因で不快な症状が出ているケースも少なくありません。
ここでは、「プリロード調整を検討すべき典型的な場面」を整理しておきましょう。
車高調を入れた直後
新品の車高調は、メーカー推奨値で組まれていることがほとんどです。 ただしこの推奨値は、
- 車種差
- 使用環境(街乗り・ワインディング・サーキット)
- ドライバーの好み
まですべてを最適化したものではありません。
「推奨だから安心」と思っていても、実際に走らせてみると違和感が出ることは十分あり得ます。
段差で突き上げが強いと感じる
低速で段差を越えたときに、
- ドンッと衝撃が伝わる
- サスペンションが動いていない感覚がある
と感じる場合、プリロードがかかりすぎている可能性があります。
伸び側ストロークが不足すると、路面追従性が落ち、 結果として衝撃がダイレクトに車体へ伝わりやすくなります。
ゴツゴツ感・乗り心地の悪化
「バネレートは高くないはずなのに、やたら硬く感じる」 そんな場合も、プリロード設定を疑う価値があります。
プリロードは、サスペンションの動き出しのしやすさに大きく影響します。 必要以上にかけてしまうと、街乗りでは常に不快なゴツゴツ感が出やすくなります。
異音(バネ鳴き・コトコト音)が出る
走行中や段差通過時に、
- コトコト音がする
- 金属が擦れるような音が出る
といった症状がある場合、プリロード不足も考えられます。
スプリングがシートに正しく当たっていないと、 動作時に遊びが発生し、異音の原因になります。
減衰力調整だけでは改善しないとき
乗り心地が悪いと感じたとき、多くの人がまず減衰力調整に手を伸ばします。
もちろん減衰力は重要ですが、 プリロード設定がズレたままでは、減衰をいじっても根本解決にならないことも多いです。
(プリロードが必要になる場面の説明)
関連リンク:goo-net – 足回りメンテナンス基礎 / DIYLabo – 基本のサスペンション知識

「減衰を柔らかくしても硬さが残る」 そんなときこそ、プリロードを一度見直す価値があります。
Ⅲ. プリロード調整に必要な工具
プリロード調整は、知識だけあっても実践できません。 専用工具がなければ、正確で安全な調整は不可能です。
特に車高調のロックシートは、走行中に緩まないよう強い力で締め付けられています。 無理に回そうとすると、
- シートを舐めてしまう
- 締結不足で走行中に緩む
- 最悪の場合、足回りトラブルにつながる
といったリスクが出てきます。
なぜ専用のフックレンチが必要なのか
モンキーレンチやマイナスドライバーで代用しようとする例も見かけますが、 これはおすすめできません。
車高調のロックシートは、
- 限られたスペース
- 円周方向に均等な力が必要
という条件で作業する必要があり、 専用形状のフックレンチでなければ力が正しく伝わらない構造になっています。
プリロード調整に必須の工具
ここで必要になるのが、車高調専用のフックレンチです。
フックレンチ 車高調レンチ CNCツールホルダー
高剛性のCNC加工で、ロックシートをしっかり捉えられるタイプは、 力を逃がさず安全に作業できます。
「一度きりの作業だから安物でいい」と考えがちですが、 足回りは命に直結する部分です。
しっかりした工具を使うことで、
- 正確なプリロード調整
- ロックシートの確実な固定
- 作業時のストレス軽減
といったメリットがあります。

次の章では、実際に全長調整式車高調を前提としたプリロード調整の具体的な手順を、 順番に解説していきます。
Ⅳ. プリロード調整の正しい手順(全長調整式車高調)
ここからは、全長調整式車高調を前提に、 プリロード調整の基本的な流れを順番に解説していきます。
作業自体は難しくありませんが、 「順番を間違えないこと」「必ず記録を残すこと」がとても重要です。
1. 車両準備とジャッキアップ
まずは安全な場所に車を停め、エンジンを停止します。
- 平坦で硬い地面を選ぶ
- サイドブレーキを確実にかける
- ジャッキアップ前にホイールナットを軽く緩める
ジャッキアップ後は、必ずジャッキスタンドで車体を支えてください。 ジャッキだけに頼った作業は非常に危険です。
2. タイヤ・ホイールの取り外し
車体が安定したことを確認したら、タイヤとホイールを取り外します。
足回りの作業スペースを確保することで、 ロックシートの状態やスプリングの動きも確認しやすくなります。
3. スプリングの長さを計測・記録する
プリロード調整を始める前に、 現在のスプリングセット長を必ず測って記録しておきましょう。
この数値が分からなくなると、
- 元の状態に戻せない
- 左右差が分からなくなる
といった「セッティング迷子」になりがちです。
4. ロックシートを緩める
フックレンチを使い、上側のロックシートを緩めます。
- 上側のロックシート:時計回りに回して緩める
- スプリングシート:反時計回りに回して離す
両者の間に隙間ができれば、ロックは解除されています。
5. プリロードを調整する
ここでプリロード量を変更します。
プリロードを緩める場合
ロックシートとスプリングシートを同時に時計回りに回し、 スプリングを伸ばします。
プリロードをかける場合
スプリングシートを反時計回りに回し、 スプリングを縮めます。
目安としては、
- スプリングが遊ばない程度
- 5〜10mm以内
に留めるのが無難です。
6. ロックシートを確実に固定する
プリロード量が決まったら、 ロックシートとスプリングシートをしっかり押し当てるように締め付けます。
ここが甘いと、走行中にプリロードが変わってしまう原因になります。
7. 車高を元に戻す(全長調整)
プリロードを変更すると、その分だけ車高も変化します。
アライメントやロールセンターを不用意に変えないためにも、 プリロードで動かした分だけ全長調整で車高を戻すことが重要です。
実際の体験談やQ&Aも参考になります: Minkara – 足回り調整体験, Yahoo!知恵袋 – サスペンション調整Q&A

次の章では、作業の仕上げとして重要な 締め付け管理と安全確認について解説します。
Ⅴ. 仕上げ作業と締め付け管理の重要性
プリロード調整が終わったら、 ここで作業完了…と言いたいところですが、実は最後の仕上げがとても重要です。
特に足回り作業後は、 「ちゃんと締まっているつもり」が一番危険な状態になりがちです。
タイヤ・ホイールの取り付け
調整が完了したら、タイヤとホイールを元に戻します。
このとき、
- ナットの座面に異物がないか
- 斜めに噛んでいないか
を必ず確認してください。
なぜトルク管理が必要なのか
ホイールナットは、
- 締めすぎ → ハブボルト破損の原因
- 締め不足 → 走行中脱輪の危険
という、どちらに転んでも危険な部位です。
特に足回りを触った直後は、 「今日は疲れたから感覚で締めて終わり」にしがちですが、 これは避けたいところです。
足回り作業後に必須の工具
ここで活躍するのが、トルク管理ができる専用工具です。
1/2インチ トルクレンチ セット 8点組
規定トルクで確実に締め付けることで、 足回り作業後の安全性をしっかり確保できます。
トルクレンチは、
- ホイールナットの締め付け
- DIY整備全般
で長く使える工具なので、 車高調調整をきっかけに用意しておいて損はありません。
最終チェック
すべての作業が終わったら、
- ロックシートが確実に締まっているか
- 左右でスプリング長に差がないか
- 試走後に異音が出ていないか
を必ず確認してください。

次の章では、 プリロード調整で迷わないためのセッティング順序を解説します。
Ⅵ. プリロード調整で迷わないためのセッティング順序
プリロード調整は、単体で完結するものではありません。 車高・アライメント・減衰力と密接に関係しているため、 順序を間違えると「何を変えても良くならない」状態に陥りがちです。
ここでは、実際にセッティングを進める際におすすめしたい、 迷いにくく、失敗しにくい調整順を整理します。
1. プリロードの仮調整(左右差をなくす)
まずは車高調を車体に取り付ける前、もしくは調整初期段階で、 左右でスプリングの抵抗感が揃うように仮調整します。
ここでは細かい乗り味は気にせず、
- スプリングが遊ばない
- 左右で明らかな差がない
状態を作るのが目的です。
2. 車高をざっくり合わせる
次に、前後・左右の車高を大まかに揃えます。
この段階で完璧を目指す必要はありませんが、 明らかな前下がり・左右傾きはここで修正しておきます。
3. アライメント調整
車高が決まったら、必ずアライメントを取ります。
プリロードや車高を触った後にアライメントを飛ばしてしまうと、 ハンドリングやタイヤの接地感が大きく狂ってしまいます。
4. 減衰力調整
次に減衰力を調整します。
ポイントは、 前後の足が同じスピードで動く感覚を目指すことです。
減衰をいきなり硬くするのではなく、 柔らかめから徐々に締めていく方が変化を掴みやすくなります。
5. プリロードの本セッティング
最後に、実走行での体感をもとにプリロードを微調整します。
この段階では、
- まず前後バランス
- 次に左右差
の順で調整していくと迷いにくくなります。

プリロードは少しの変更でも体感が変わるため、 一度に大きく動かさず、必ず記録を残しながら進めてください。
Ⅶ. プリロードの注意点とデメリット
プリロードは、うまく使えば乗り心地と安定感を両立できる便利な調整項目です。 しかし一方で、やりすぎると逆効果になる点も理解しておく必要があります。
プリロードをかけすぎるとどうなるか
プリロードを過剰にかけると、サスペンションは本来の役割を果たしにくくなります。
- サスペンションが動きにくくなる
- 路面入力を吸収できず、突き上げが強くなる
- いわゆる「棒足」に近い状態になる
特に街乗りでは、 細かな凹凸を拾いやすくなり、不快なゴツゴツ感が目立つようになります。
伸び側ストローク不足による影響
プリロードをかけるほど、ダンパーの初期位置は縮み側へ寄っていきます。 その結果、伸び側ストロークが不足します。
これにより、
- 路面追従性の低下
- コーナー立ち上がりでのトラクション低下
- ギャップ通過時にタイヤが浮きやすくなる
といったデメリットが発生します。
スプリングの許容ストロークに注意
スプリングには必ず許容ストロークが設定されています。
この範囲を超えて縮めてしまうと、
- スプリングが元の長さに戻らない
- 最悪の場合、破断につながる
といったリスクがあります。
メーカーが公表している仕様や注意書きは、 必ず事前に確認しておきましょう。
ゼロプリロードという考え方
サーキット走行や、非常に硬いスプリングを使う場合、 ゼロプリロードが選ばれることもあります。
ここでいうゼロプリロードとは、
- スプリングが遊ばない
- シートとスプリングが軽く当たっている
状態を指し、完全にフリーな状態ではありません。
プリロードゼロでもセッティングは可能ですが、 街乗りメインの場合は、少量のプリロードをかけた方が扱いやすいケースも多いです。
プリロードは「微調整」である
最後に強調しておきたいのは、 プリロードはセッティングの微調整項目だという点です。
体感や調整感覚に関しては別視点の解説も参考になります: note – 車高調プリロード考察, 百階段ブログ – 足回り調整メモ

大きな変化を狙って触るものではなく、 あくまで車高・減衰・アライメントが整った上での仕上げと考えると、 失敗しにくくなります。
まとめ
車高調のプリロード設定は、 「かけると硬くなる」「ゼロが正解」といった単純な話ではありません。
プリロードの本質は、サスペンションの硬さを変えることではなく、ストローク配分を最適化することです。
- プリロードをかけてもバネレートは変わらない
- 変わるのはサスペンションの動き出しとストローク配分
- かけすぎると乗り心地や路面追従性が悪化する
というポイントを押さえておくだけでも、 セッティングに対する見え方は大きく変わります。
街乗りとスポーツ走行を両立させたい場合、 プリロードは「少量・慎重に・記録しながら」
また、プリロード調整は知識だけでなく、 正しい工具と安全意識があってこそ意味を持ちます。
今回の記事を参考に、
- 今の乗り心地に違和感がある
- 減衰調整だけでは改善しない
- 車高調をもっと活かしたい
と感じている方は、一度プリロード設定を見直してみてください。
少しの調整で、 「なんとなく硬い」足回りが「狙い通り動く」足回りに変わるはずです 🙂
あわせて読みたい
よくある質問
- Qプリロードはゼロが一番いいのですか?
- A
一概にそうとは言えません。 ゼロプリロードはサーキット走行や硬いスプリング向けの考え方で、 街乗りでは少量のプリロードをかけた方が扱いやすい場合も多いです。
- Qプリロードをかけると車高が上がるのはなぜですか?
- A
プリロードによってダンパーの初期位置が変わるためです。 全長調整式車高調では、車高は別途全長調整で戻すのが基本になります。
- Qプリロード調整と減衰調整、どちらを先にやるべきですか?
- A
基本は車高・アライメントを整えた後、 減衰調整 → プリロード微調整の順がおすすめです。 プリロードは仕上げの調整項目と考えると失敗しにくくなります。


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